第61章

田中辰哉が入ってくるのを見て、田中爺さんの表情がわずかに和らいだ。

「……どうして戻ってきた」

「家で何かあったと聞きました。様子を見に」

田中辰哉はまっすぐ中へ入り、田中家の次男夫婦には目もくれない。爺さんの前まで来ると、意図的か無意識か、大島莉理をかばうように立ち位置を変えた。

「おじいちゃんの判断は、少し不公平だと思います」

「どこが不公平だ」

田中爺さんは不機嫌になるどころか、面白がるように問い返した。

だが、その反応がかえって大島莉理の胸を重くした。

怒鳴られる方がまだいい。せいぜい小言を言われ、罰を与えられて終わる。ところが、こんなふうに妙に辛抱強い時こそ――嵐の...

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